居抜き店舗のメリットの基本は、前の経営者がつくつた店舗をそのまま活用できるということである。別項でも指摘しておいたように、ほとんど前のお店と同じ状態でオープンして成功している事例はある。しかし、全体として見れば、そういうお店はやはり例外的な事例に属すると考えなければならない。
ところで、居抜きかどうかは別として、 一般に新しくオープンするお店の強源は、まさにその「新しさ」にある。お客様というのはつねに、飲食店に新鮮さを求めているものだ。これまでにないお店、変わったお店、おもしろい特徴のあるお店。そういうお店を探しているのである。
だから、テレビや雑誌などで紹介されたお店にお客様が殺到するのである。そこそこ「いいお店」なら、いまの時代だれでも一店や二店知っている。それでも、多少遠くにあつてもわざわざ話題のお店に行くのは、自分の知らないお店を体験したいという気持ちが強いからなのだ。
つまり、居抜き店舗でオープンする場合であっても、この「新しさ」をアピールすることは、何よりも強力な差別化とアピールの武器になるということだ。前のお店と同業種同業態で店舗は流用していても、中身はまつたく違っているということをお客様に明確に知らせる必要がある。といつても、別にむずかしいことではない。要するに、前のお店に何かプラスアルフアを付け加えればいいのだ。
たとえば、内装はそのまま流用したとしても、ちょっとした家具や飾り物を置いてみるだけで、お客様の印象はガラリと変わる。そもそも飲食店の雰囲気というのは、絵や花などを飾るだけでも、かなり変えられるものなのである。何か殺風景で冷たい印象だったお店が、店内中央の大テーブルに生花を飾つたとたんに、ほどよい華やかさと温かみのある雰囲気に変わる。そんなケースはよく見かけるはずだ。
もちろん、資金的に余裕があるのなら、同業種同業態であっても内外装には手を加えるべきである。しかし、大事なのは、お店のイメージを変えるにはどうしてらいいのかという発想なのである。なお、お客様のハートをとらえるプラスアルフアは店舗のつくりだけではない。
飲食店のいちばんの売り物であるメニューにおいても、前のお店との違い、新鮮な魅力が十分に表現されていなければならない。同業種同業態の場合、どうしても前のお店と似たようなメニューになりがちだから注意してほしい。 一つでも二つでもいい。当店だけのオリジナルメニューを打ち出すことで、お客様は中身の違いをはっきりと理解してくれる。