前節で述べたように、居抜き店舗活用の基本は、できるだけ前のお店の内装を生かすことだ。できるだけお金をかけない。それが活用の基本である。しかし、ただ前のお店の店舗を流用するだけでは「生かす」ことにはならない。そこで注意しておきたいのは、お客様の視点に立って考える必要があるということだ。
お店づくりでもっとも大事なことは、お客様から見てどういうお店に映るのかということである。もちろん、せっかく自分のお店をつくるのだから、自分の趣味や好みを反映させたいと思うだろう。その気持ちはよくわかる。しかし、もしもどんなにお金をかけたとしても、それがお客様にとっての「いいお店」になっていなければ意味がないのである。
逆にいえば、居抜き店舗を活用するのか、それとも新店舗でオープンするのかということは、お客様にとっては関係がないことなのだ。お客様にとっては、そのお店が新鮮な魅力のあるお店なのかどうか、それだけが関心事なのである。
とくに居抜き店舗の場合、前のお店が撤退した店舗を活用する。撤退の理由は、大半が経営の失敗である。ということは、前のお店のイメージを引きずったままでは、お客様の目には新しいお店とは映りにくいわけだ。
たしかに、いまのお客様は昔と違い、過去のことにはあまりこだわらなくなっている。しかし、とくにこだわらなくても、お店自体=店舗に対する悪いイメージがどこかに残っていたら、自然とそのお店を敬遠するようになる。それがお客様の心理である。なにしろ、いまは飲食店などいくらでもある時代なのだ。なんとなくイヤな感じのするお店をわざわざ利用することはない。
したがって、居抜き店舗の活用では余計なお金はかけずに、なおかつお客様に「新しいお店」と認められるようなアピールを工夫しなければならない。つまり、効果的な店舗のイメージチェンジである。
できるだけお金をかけないようにするためには、内装業者に依頼するものを徹底的に絞り込むことだ。たとえば、壁が汚れていてイメージが悪いのなら、壁紙を張り替えるだけでいい。
とにかく、お金をかけないためには改装する部分をできるだけ少なくすることだが、どうしても改装する必要があると判断した場合は、材料よりもデザインを大事にすることがポイントになる。「いいお店」にしようとすると、つい「いい材料」に目が行ってしまいがちだが、そんなことでは節約はできない。ただの安普請ではダメだが、安い材料でもデザイン次第で「いいお店」はつくれるのである。
お店のイメージチェンジでは、家具や装飾品、置物、花などの小物類が大きな効果を発揮することも忘れてはいけない。そのほうが安上がりというだけではない。むしろ、自由のきく小物類のほうが、イメージに変化をつけやすいのである。