お店の外観のセンスはいいし、商品やサービスも悪くないのに繁盛できない、というケースがよくある。どうしてなのか。経営者は不思議で仕方がないだろう。しかし、お客様の立場に立てば、原因はおのずと見えてくる。要するに、初めての人にとっての安心感がないのである。
最近は、店舗のデザインに気を遣うお店が増えて、センスのよさを競い合うケースも少なくないほどになっている。それはけっこうなことだ。豊かな時代にふさわしいお店が増えることは、外食市場の成始まらないのである。
当たり前のことだが、飲食店のよさは、利用してみてはじめてわかるものである。たとえば、雑誌で見たとか知人から聞いたお店だったとしても、実際に席に着いて、サービスを受け、料理を食べて、店内の雰囲気を味わってみなければ、本当のところはわからない。ましてや、 一般のフリ客は何の予備知識もない人たちである。お客様になってほしいのなら、自店のよさを知らせる努力をするというのは当然のことだろう。
いくら見た目がよくても、安心感を感じられない、というより不安を感じさせてしまうようなお店では、知らない人が利用してくれるはずがない。
フリ客がもっとも不安に感じるのは、価格と商品の内容である。このお店にはどんなメニューがあって、いくらくらいかかるのか。お客様の最大の関心事はこれだ。お客様のお店選びは、その時の利用動機によつて変わる。そして、お客様の予算は利用動機によつて決まる。つまり、予算を立てられないようなお店では、安心して利用できないということになる。また、メニューにしても、自分の食べたい料理があるかどうかは、業種(看板、外観でのアピール)だけではわからない。
冒頭で書いた繁盛できないお店とは、要するに、こういう不安を抱かせてしまうお店である。原因は明快。サンプルケースがないからである。最近はどうかするとサンプルケースを軽視する傾向があるようだが、これではいけない。フリ客に安心感を持たせることは、固定客づくりの第一歩でもあるのだ。
もちろん、業種業態によつてはサンプルケースが似合わないとか、設置する場所がないといつた場合もあるだろう。だったら、メニュー表を掲示すればいい。
ただし、サンプルケースもメニュー表も、単純に価格とメニューの内容を知らせるためのものではない、ということも指摘しておきたい。もうひとつの役割は、それを見せることによって消費意欲を刺激することなのだ。
したがって、サンプルケースもメニュー表も、清潔感とセンスのよさが求められる。よく薄汚れたサンプルケースを見かけるが、これではかえつて逆効果だ。季節感を上手に取り入れるなど、工夫の余地はいっぱいある。