まず、工事に入る前に、近所に挨拶しておく。これは非常に大事なことである。たしかに、小さなお店の場合、工事自体は大したものではない。期間も1カ月から1カ月半程度と短いし、毎日騒音をまき散らすわけでもない。それほど迷惑はかけないと思うかもしれないが、それは違う。近所にとつては迷惑なのだ。
また、この挨拶はたんに「ご迷惑をおかけします」ということではない。これから末長くお付き合いさせていただく、という挨拶でもある。小さなお店は地域密着が基本。近所に嫌われては成功できない。
さて、工事が始まったら、できるだけ現場に足を運ぶことだ。この期間は他のオープン準備も山積ふだから業者任せにしてしまうケースが少なくない。しかし、できるだけ時間をやり繰りして、実行してもらいたい。
現場に顔を出す目的は、設計と工程表通りに工事が進んでいるかどうかをチェックすることだが、もうひとつ、大切な目的がある。それは、工事の人たちとの良好な人間関係を築くことである。
どんな仕事でも、やる人の気持ち次第で結果はずいぶんと変わる。店舗の工事も同じである。大筋では大差ないかもしれないが、細かい部分で必ず仕上がりに違いが出るものである。とくに内装は、そういうちょっとした仕上げ具合のよし悪しが、印象を大きく左右する。だから、現場に顔を出すときは、何か差し入れをすることを忘れてはいけない。缶コーヒーでもいい。要は、こちらの気持ちを示すことが大切なのだ。
また、工事中ならまだ、いろいろと手直しがきく。とくに厨房は設計図の段階ではわかりにくいが、工事が進んでくると、実際の仕事が具体的に想定できるようになる。そこで不具合が見つかったら、多少の追加料金を払ってでも直しておくべきなのだ。
とくに、大型機器類の配置や配管関係の工事は、完成してから変更するのは、実際問題としてほとんど不可能になってしまう。収納棚の高さ、位置なども自分の体で判断するのが間違いがない。工事の人たちと親しくなっていれば、そういう変更も言いやすいし、ちょっとした棚をつくる程度のことなら、無料でやってくれることもる。 ・
引き渡しでの注意点はまず、契約した引き渡し日は必ずしも工事完成日ではない、ということである。引き渡し日とは、見積書と設計図通りに仕上がっているかを確認する日なのだ。
店舗の端から端まで細かくチェックすることは言うまでもないが、動くものはすべて動かしてみることが大切だ。機器類などはもちろん、ドア、窓、棚、引き出しなど、何度も開け閉めして建て付け具合を確認する。空調設備はできれば半曰くらいは運転して、きき具合を確認すべきである。
問題があればただちにダメエ事にかかつてもらうが、そのためにも工事契約書には、「完成日」とともに、工事が遅れたり補修工事が必要になった場合の対処の仕方も明記しておかなければならない。こういう契約事での口約束は絶対に避けるべきである。