仕入では食材業者とのパートナーシップが大切と言ったが、さらに飛躍するためには、同時に、独自の食材仕入ルートを開拓していく努力も欠かせない。なぜ、独自のルートが必要なのかというと、それこそが「独自の食材」をもつための方法だからである。
商品差別化は、飲食店成功のための最大のテーマである。他店では食べられない商品をもつことは、他店との競争を勝ち抜くための最大の武器になる。他店の真似のできないオリジナルメニューがあれば、どんなに競合店が増えても恐れるに足りない。
ところで、そもそも商品開発の基本は材料である。どんな材料を使うかで、商品の付加価値は大きく変わってくる。
たとえば、最近はスーパーなどでも「こだわりの食材」が主婦の間で人気になつている。銘柄品といえば牛肉というのは、遠い昔の話である。卵や鶏肉、豚肉、ジャガイモ、トマトといった、ごくありふれた食材でも、いろいろな産地、銘柄がアピールされるようになっている。
その違いがどれくらいあるのかということは、いまは問題ではない。大事なのは、その材料自体がもつ付加価値である。そして、残念なことに、食材へのこだわりということでは、いまは飲食店よりも消費者のほうが進んでいるのだ。ということは、他店では使っていない材料、自店だけの「変わった食材」を使うとうことは、それだけでも大きな付加価値になるということだ。
オリジナルメニューのつくり方の項でも述べたが、商品の差別化にはいろいろな方法がある。調理技術も大切だが、どんなに高度な技術があっても、使う材料がよくなければ料理の完成度は低くなってしまう。商品開発も同じで、材料さえ飛び抜けていれば、技術が足りなくても高い付加価値を生み出すことができるのだ。
そして、ここが肝心なところだが、オリジナルメニュー開発手法を5つ挙げた中で、最も難易度が高いのが「独自の食材を使用する」ことだった言い替えれば、独自の食材をもつことは、調理技術をも超える可能性をもっているということだ。
いまのお客様は、ただたんにおいしいというだけでは満足しない。何かしら変わっている部分を求めている。それなら、商品づくりの基本である材料に徹底的にこだわることだ。そして、こだわりを徹底していけば、独自の調達に行き着く。すべての材料で、ということではない。たった1つでもいい。その材料を使った商品が看板になることで、強力な差別化を実現できるのである。
もちろん、ルート開拓は簡単なことではない。しかし、探し続ければぶつかることもある。たとえば魚介なら、漁獲量が少ないために市場に回らないものがけっこうある。野菜でもそうだ。あるいは、変わった栽培をしている生産者に出会うということもある。
ルート開拓で大切なことは、とにかく探し続けること。そして、絶対に焦らないことである。遊びがてら地方を回りながら、たまたま見つかる。それくらいの心構えでちょうどいい。