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飲食店の雰囲気づくりはどうあるべきか

飲食店の雰囲気づくりはどうあるべきか

店の雰囲気のよし悪しは店長の責任

雰囲気というのは定義がむずかしい。よく、客席ホールの内装デザインをもって飲食店の雰囲気づくりという人がいるが、そういう人はたいていデザイン偏重に傾いている人である。

たしかに、インテリアデザインはお店の雰囲気を形成する大事な要素であるし、また事実、そのデザインによって雰囲気の方向性はかなり限定されてしまう。インテリアデザインは同時に、他店との違いを見せる差別化の重要な方法でもある。

しかし、デザインがすぐれているからといって、ただちによい雰囲気のお店ということにはならない。むしろ、デザインはけっこう気が利いているのに、お世辞にも雰囲気がいいなどとはいえないお店が多い。

また、飲食業の三要素であるQSCのCはクレンリネス=清潔感だが、清潔でありさえすればどんな店舗でもかまわない、ということではない。清潔感はレストランにおいて絶対に不可欠な要素ではあるが、お客はそれだけでは満足してくれない。当たり前である。

いくら清潔であっても、無味乾燥なただの箱のような店舗では、おいしいはずの料理もまずくしか感じられないだろう。

このように、飲食店のあるべき雰囲気を定義づけるのがむずかしいのは、それが多分に感覚的なものだからだ。もちろん、そんなことはたいていの人が知っている。日ごろから、このお店はいい雰囲気だとか、あのお店の雰囲気は最低だったとか感じているはずである。それを正確な言葉で表現できなくても、別に支障はない。それはそういうことのプロに任せておけばいい。

しかし、飲食店としてのいい雰囲気がどういうものかを感じ取っているのなら、その経験が自店で生かされていなければおかしい。そして、もしも自店の雰囲気に問題があるとしたら、それは店長であるあなたの責任なのである。

お店の雰囲気は、その中で働く人たちにとっては空気のようなものである。そのため、忙しい毎日の営業のなかではつい、その質を顧ることをなおぎりにしてしまいがちだ。しかし、空気のようなものだからこそ、お客は敏感に反応するということを忘れてはいけない。

「店肌」の荒れは人とモノの両面からやつてくる

お店の雰囲気が悪くなることを「肌荒れ」を起こしているという。飲食店の「店肌」には人とモノの両面がある。

人の面での肌荒れは、職場規律の乱れが原因となって進行する。職場規律がきっちりと守られていれば、従業員はいつも生き生きとしている。しかし、職場規律というのは、よほど気をつけていないといつの間にか、緩みが出てくるものだ。そして、いったん緩みはじめると、なかなか歯止めがきかなくなる。

よくデシャップ付近やカウンターの前に手の空いた従業員がたむろして、ぺちゃくちゃおしゃべりに興じたリタバコをふかしていたりするお店がある。彼らにはとくに悪気はないのかもしれないが、こういう行為がお客の目にどう映っているのか考えようともしないところに、問題の根の深さがある。

そこまで乱れていなくても、従業員の気持ちが張りつめていないと、どうしてもお客への気配りが希薄になりがちだ。挨拶が通りいっぺんになるとか、お客から要求されなければ水を取り替えないとか、食べ終えたお皿をすぐに下げない、下げ方がぞんざいになるなど、従業員の「肌荒れ」を示す兆候は数え挙げればきりがない。ささいな兆候はすぐにお客に察知されないかもしれないが、確実にお店の空気を汚染しているのである。

では、モノの場合はどうか。内装、また、テーブル、そして食器。どれも使用期間相応に古ぼけ、痛んでくる。形あるものは必ず壊れるというが、日ごろからクレンリネスを心がけていても、新装開店時の状態を保つことは物理的に不可能で

ある。そして、よほどの高級店でない限り、少しくらい傷んだ程度では新品と取り替えるのは無理な話だろう。

しかしそれでも、やはり程度の問題である。何力所も欠けた食器を出されて喜ぶお客はいないのはいうまでもないことだが、そういう食器を平気で使う神経は、すでにお店の「肌荒れ」が相当進行していることを示している。お客を甘く見ている証拠だから、十中八九、従業員のサービス精神にも問題が生じているはずなのだ。

店の清潔度は店長の意識と意欲のパロメーター

ところで、クレンリネスとはたんに清掃をすればいい、ということではない。お店のどこもかしこもピカピカに磨きあげるという、ハイレベルの清潔感を意味するのである。

料理のおいしさ(Q)もサービス(S)も、クレンリネスによる快い清潔感があってこそ、その価値を十分に発揮することができる。極端な話、本当に清潔感がみなぎっているお店だと、お客は実際以上においしく、感じのよい印象をもつものだ。それくらい大切なことなのだ。

飲食店が不潔であっていいはずがない。そんなことは誰もがわかっている。しかし現実はどうか。残念ながら、本当に清潔感を磨く努力を怠っていないお店は、明らかに少数派である。それゆえ、しっかりとクレンリネスを心がけているだけにすぎないお店が、実際以上に光り輝いて見えたりする。

いつも快い清潔感に満ちたお店だからこそ、お客は楽しい食事の雰囲気を味わうことができる。これは、お客の清潔感覚を満足させるためだけではない。お店の清潔度はそのまま、そのお店=会社の飲食業としての認識のレベルをあらわしているからだ。

ということは、お店の清潔度は店長の意識と意欲のレベルをはかるバロメーターでもあるということだ。汚れたフロアや窓ガラスに鈍感な店長のお店で、質の高い料理やサービスを期待することはできない。このことは、お客がいちばんよく知っている。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。