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飲食店長の絶対条件(1) チェックリスト付き店長としての心構え

飲食店長の絶対条件(1) チェックリスト付き店長としての心構え

経営者の代わりに利益を生み出すのが店長の仕事

店長の職務をひとことでいえば、経営者の代行業である。その仕事の内容については、次章で詳しく述べるが、ここではまず、店長の心構えとして次のことを頭に叩き込んでほしいと思う。

それは、自分は雇われていると考えてはいけない、ということだ。一雇われていると思うと、どうしても責任感が甘くなる。最終的な責任は経営者にあるのだからこそ、自分の逃げ道をつくってしまう。それでどうして経営者の代行業がつとまるだろうか。

代行とは経営者の代わりにお店にいることではない。経営者の代わりにお店を繁盛させ、利益を生み出すことが仕事である。そして、店長とはその仕事のプロなのである。もちろん、お店の運営方針はトップが決めることだが、気持ちとしては「繁盛請負人」くらいの気概をもってほしい。

部下全員の動きを調整するのが店長の仕事

飲食店の仕事でいちばん大切なことは、従業員全員のチームプレーである。それが、お客に対して公平で、かつレベルの高いサービスを提供する基本である。つまり、店長はお店というチームをまとめる監督でなければならないのだが、このことを誤解している店長が非常に多い。

たとえば、従業員の先頭に立って働くことが店長の仕事だと信じている店長がよくいる。しかしそれは、実は店長の仕事ではないのだ。店長はふつう、お店の入り回付近に位置している。なぜこの位置にいなければならないのかというと、ホール全体を見渡して、従業員のサービスがキチンとおこなわれているかどうか、監督しなければならないからだ。

もちろん、ランチタイムなどのピーク時など、店長もウエイターやウエイトレスとともに接客サービスに当たらなければならないときもある。しかし、この場合でも、店長の最大関心時は部下の接客サービスにミスがないかということと、厨一房とホールの連携がスムーズにいっているかということの、二点でなければならない。

なぜなら店長には、すべてのお客に満足してもらうための責任があるからだ。すべてのお客に満足してもらうために、部下全員の動きを調整すること、それが、この場面での店長の本来の仕事なのである。部下と一緒になって、自分がサービス要員のひとりになってしまったら、この調整役=監督が不在になってしまう。

いいかえれば、お客の満足に対する責任を放棄しているに等しいのである。たしかに、こういう店長を重宝がる経営者が少なくないのは、残念ながら事実であるが……。

店長みずからがサービス要員になり切ってしまうお店では、従業員にとって仕事とは、たんに「片づける」ものという意識になりやすい。

一方、お客の満足を第一に考える店長は、お客の期待にそむかないように、つねに従業員の動きを見守り、的確な指示を出している。教育、訓練、しつけもしっかりしている。だから、従業員もその指示の意味を理るようになるのである。

店長のリーダーシップ – 部下にやる気をもたせる

チームをまとめていくには、リーダーシップを発揮できなければならない。では、店長のリーダーシップとは何か。ひとことでいえば、部下に意欲づけができるということである。

お店は仕事の場である。店長を中心にいくら仲良くできても、それが仕事の成果=売上げにつながっていなければ、何の意味もない。部下に仕事への意欲をもたせられるかどうかはもちろん、時給や待遇など店長の権限だけでは動かせない部分も絡んでいる。しかし、常識的な職場環境であれば、部下の意欲づけの責任は店長にあるのだ。

リーダーシップを発揮するには、部下に尊敬されなければいけない。人を動かせるかどうかは、人格と人間としての器の大きさにかかわっているのだ。あなただってそうだろう。まるで尊敬できない人間から命令されて、それでヤル気になれるだろうか。

部下に命令する立場にある者は、みずからがその範を部下に示せなければいけない。飲食業の素晴らしさ、お店の現場で働くことの素晴らしさと仕事の重要性を、まず自分が認識することが大事だ。この章で飲食業とは何かについて詳しく述べたのもそのためなのだが、この理解、認識が店長に欠けていては、部下のヤル気を引き出すことはできない。

逆にいえば、その素晴らしさを体現し、感じさせることができるからこそ、部下は店長の命令に納得して従うのである。

したがって店長は、お店の中でもっとも自分に対して厳しい人間でなければならない。自分が目標達成に向かってもっとも意欲と意志のある人間でなければならない。店長が自分に甘い姿勢でいれば、必ず部下も右へならえになっていく。

店長はビジネスマンであることを忘れるな

部下に尊敬されるようになるためには、仕事ばかりでなく、日常の私生活においても十分に注意する必要がある。

店長はお店の看板を背負っているのである。仕事以外の時間でも、この看板は消えることがない。自分では意識していなくても、周囲は店長として見ているものである。

こういうことを意識することが、社会的責任をもつということなのだ。仕事上の責任なら、誰でも意識することができるが、これはなかなかむずかしい。だからこそ、それができる人は部下から尊敬されるのである。

また、出勤時の服装についても十分に気をつけなくてはいけない。店長ともなればビジネスマンである。それが遊びに行くようなだらしのない服装で出動するのでは、人格を疑われても仕方がない。ビジネスマンとしてふさわしい、スキを見せない清潔な服装を心がけることだ。

部下へのキメ細かな気配り

部下によく働いてもらうには、部下一人ひとりの様子を細かく観察することだ。仕事のやり方についてはいうまでもないが、部下の健康状態から私生活の面まで神経を行き届かせて、何か異変があったら素早くキャッチすることが大切である。といっても別に、部下のプライバシーまで詮索しろといっているのではない。

たとえば、若い人は私生活の乱れや悩みが原因で辞めることが多いが、そういうときは必ず、何か兆候がある。服装が乱れるとか、態度がどこかだらしなくなるとか、遅刻をするようになるなどだ。ふだんから細かく観察していれば、必ずそういう変化に気がつく。

気がついたらすぐに、それとなく話をし、相談に乗ってあげる。そういう配慮が大切だということだ。部下にはそれぞれの生活環境があり、家庭の事情もある。それを無視して無理に出動させることが、部下が突然やめてしまう原因になっていることが少なくないのである。

店長はムードメーカーなのだ

店長は朝、必ず早めに出動しなくてはいけない。少なくとも、部下が全員そろう時間には店長はスタンバイの状態にあることが望ましい。

よく、昼のピーク直前になってようやく出勤してくる店長がいる。ひどい場合は、正午過ぎ、お店の中が戦争状態になっているときにのうのうと出勤してきて、汗をかいて走り回っている部下に「おはよう」などと声をかけたりする。

どうしてこういうことになるのかというと、部下の監督としての職務をまったく理解していないからだ。忙しいようだから手伝ってあげようくらいの気持ちしかない。これは、自分が先頭に立って働く店長よりもっと悪い。

店長には、お店がその日一日、ちゃんと稼動できる状態になっているかどうかを確認する責任がある。人員はそろっているか、調理場には食材がきちんと届い

ているか、その他、問題はないか。開店に当たってそれらをチェックするのは、お客の満足に対して責任をもつ店長として、当然の仕事なのである。店長の出動がルーズなお店では、たいてい従業員にも遅刻や欠勤が多い。部下は上司を見習うのである。

そして、お店の中の空気が出勤時間に対してルーズになると、他の規律もどんどん崩れていく。これくらいはいいや、という空気に毒されてしまうのだ。部下の出勤時間厳守は、店長の率先垂範にかかっているのである。

また、店長が朝早く出勤すれば、部下の私服を見ることができるし、部下の精神状態を見ることもできる。部下の気分が乗っていないようなら、明るく声をかけて元気づけてあげなければならない。店長はお店のムードメーカーでもあるのだ。したがって、店長は自分自身にヤル気の波があってはいけない。お店ではいつでも明るく、活気がなければいけないのだ。

そもそも、いつも笑顔を絶やさないというのは、接客サービスの基本である。内心どんな心配ごとがあろうと、つねにあるべきムードをつくる。それがプロというものである。

うまい叱り方で叱るべきときは叱れ

店長はまた、部下を叱ることができなければならない。店長はお店の中の最高責任者である。いいたくないことでも、必要があればいわねばならない立場にいるのだ。最近はこの立場を理解できず、部下に対していい顔をしたがる店長が増えているようだが、叱るベきときに決然と叱ることができないようでは、店長としての資格はない。

なぜなら、叱る必要があるということは、お店の中で問題を抱えているからである。問題は放置すれば必ず、より大きな問題になっていく。そして、叱るなどという対症療法ではどうにもならなくなってしまう。ただし、叱り方というものがある。なぜ叱られたのか、どこをどう直せばいいのかということが、部下に簡単に理解できるような叱り方であると同時に、愛情があるから叱るのだということを伝える叱り方でなければいけない。本心から反省できるような叱り方であるのただ頭ごなしに叱るだけでは、かえって反発を招くだけの改善されなければ叱る意味はない。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。