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飲食店長は組織内コミュニケーションの重要性を知るべき

飲食店長は組織内コミュニケーションの重要性を知るべき

店長は経営者と部下とのパイプ役

良好な人間関係を保つのにコミュニケーションが大切なことはいうまでもないだろう。また、よい仕事がよい人間関係から生まれることも常識である。ところが、実際問題となると、コミュニケーションの軽視が起こりやすい。

たとえば、部下に対して適切な指示を与えない店長、部下の不満がたまっているのを知りながら、知らんぷりをしている店長。部下に悩みや問題行動の兆候が見られるのに、相談に乗ろうともしない店長。調理長との関係が疎遠で、ろくに話もしない店長。営業日報をきちんとつけない店長っこれらは、組織内のコミュニケーションを軽視ないしは無視している店長の例である。

ところで、勘違いしている人が多いようなのだが、店長として求められているコミュニケーションは、何もお店の中の人間関係についてだけではない。いま例として営業日報を挙げたが、経営者(会社組織が大きい場合は直属の上司)とのコミュニケーションと、経営者と部下とをつなぐためのパイプ役としてのコミュニケーションを円滑にすることもまた、店長に課せられた重要なマネジメントなのである。

では、組織内コミュニケーションはどうあるべきなのか。経営者(上司)との関係から考えてみよう。

報告の重要性と注意すべきポイント

経営者とのコミュニケーションは大きく二つに分けられる。ひとつは報告。もうひとつは経営政策の確認である。まず報告には、営業日報や月例報告のような定例報告と、必要に応じておこなう臨時報告とがある。

では、なぜ営業日報が必要なのだろうか。よく経営者が店長を管理する(というより縛りつける)ために書かされている、と内心不満に思っている店長を見かけるが、こういう店長は組織内コミュニケーションというものをまったく理解していない。

営業日報が必要なのは、第一に店長がお店の計数を管理するためだが、同時に、その数字を経営者の意思決定や経営方針の変更などの経営行動に生かすためなのだ。営業日報のフォームは会社によっていろいろあるだろうが、ふつうは売上高や客数、材料原価、人件費など、営業関係の数字はひととおリチェックできるようになっているの店長にはトップの代行者としての計数管理責任があるが、それはあくまで経営者から示されたひとつの方針内での責任であり、行動である。

しかし、経営は生きものであり、つねに外部環境の変化に柔軟に対応していかなければならない。方針はつねに変更される可能性がある。その意思決定のための材料(内部情報)を経営者に提供することは、まさに代行者としての店長の基本的なつとめなのである。

臨時報告でいちばん大切なことは、その目的性だ。つまり、本当に報告する必要があるかどうか、その判断が重要なのである。報告に当たっては、次の点に注意する。
①事実と推測、自分の意見を的確に区別する
②タイムリーであること
③わかりやすく整理して報告する

とくに①については十分に気をつけたい。この区別が曖昧だと、かえって経営者の判断を狂わせる元になってしまうからだ。内容を客観化させるには、数字で表現できることは数字にすることが大切だ。

経営政策の確認

次に、経営者の経営政策の確認である。これは、複数の店舗をもつ会社の場合は店長会議になる。

店長会議の形態は、同一業種業態のチェーン店組織の場合と、いくつかの業種業態を運営している会社の場合とで違ってくるが、ポイントは、経営者がいま、お店の経営について何をどう考えているか、ということの確認である。

店長は経営者の代行者なのだからあまりにも当然のことなのだが、意外と目先の数字(売上高予算と実績)にばかり気をとられてしまうことが多い。もちろん、売上高は大切であるが、売上高とは経営者の考えるスタンダードと杢晏一体のものでなければならないものだ。したがって、かりに売上高予算を達成していても、お店のQSCがスタンダードとズレていたら、会社としては大きな問題を抱えていることになる。

とくにメニューや価格などの政策を変更すると発表された場合は、それによってお店のQSCはどう変わるのか、どうあらねばならないのかについて、しっかりと理解できていなければならない。そうでなければ、自分は何をすべきなのか、そして部下に何をどう要求していいのかがわからないことになる。

命令者として心がけたい3カ条

部ドとのコミュニケーションは、命令者と部下の話の間き役の二つに大別できる。

命令者としての立場で大事なことは、部下に店長の意図を十分に理解してもらうためのコミュニケーションだということだ。そして、店長の意図とは、経営者の意図でなければならない。これが、店長は経営者と部下とのパイプ役ということの意味である。

もちろん、店長会議の内容を何から何まで部下に知らせる必要はない。秘密にすべきもの以外の情報提供ということだが、会社の方針や重要課題を知ることで、部下のヤル気は確実に高まる。行動目標が明確になり、チームとしての団結力も強くなる。

命令者としてのコミュニケーションで注意しなければならないのは、次の三点である。

①自分の言葉で話す=社長はこういっていた式の話し方や、社長の命令だからといった自分の責任を回避する話し方では、部下の信頼を得られない。

②どんなことでもわかりやすく説明する=こんなことはわかりきったことだから、という態度であってはならない。また、主任、社員、パート・アルバイトと、部下にはそれぞれの職位があるが、同様に、仕事についての知識や理解度もそれぞれ違う。それを無視して画一的に話しても、意図することを正確に伝達することはできない。

③部下の関心をそそるように話す=なぜそうしなければならないのか、それがどれくらい重要なことで、どんな成果が期待されているのか、成果が出れば、職場はどう変わるのか。部下1人ひとりの行動日標につながるような話し方の。工夫が大切である。

ミーテイングの機会は多くもとう

一般に店長がおろそかにしがちなのは、部下の話の聞き役としての立場である。毎日同じ職場で働いているのだからとか、忙しくてそんな暇はないとか理由をつけたがるものだが、部下とのコミュニケーション不足は間違いなく、お店の組織力も低下させていく。そもそもコミュニケーションとは、お互いに意思や感情を伝達し合うことで、一方的なものではあり得ない。

部下の話の聞き役として最悪なのは、うわべだけで聞いているフリをすることだ。人間は、相手がちゃんと聞いてくれているかどうかくらい、すぐにわかるものだ。一方的に命令ばかりして、部下の話には耳を傾けようとしない店長を、誰が信頼できる店長、素晴らしい監督と思うだろうか。部下は、自分の話を聞いてくれるからこそ、店長の話もよく間き、その意味を理解しようと努力するものなのである。

部下にとって店長は、お店で唯一の頼れる人、頼りたい人である。また、毎日仕事をしていれば、誰しも悩みや不安が出てくる。店長に話しかけるときとは、部下が自分のほうを向いてほしい、相談に乗ってほしいというサインを出しているときなのだ。

表面的な話題は他愛のないことでも、その言葉の裏に隠された本音があることも多い。そういう気持ちを汲み取ってあげる心の広さ、深い観察力がなければ、店長の資格はない。人間は、自分をわかってくれる人のために働きたい、という気持ちをもっている。これは、あなたと経営者との関係でも同じことのはずだ。

ただ、部下にいい顔をしたがる店長になってはいけない。職場でのコミュニケーションは、たんに人間関係を良好にするために必要なのではない。それによって行動目標を達成することが目的なのだ。このことをつねに部下に意識させるためには、日ごろからミーティングの機会をつくり、組織内コミュニケーションの大切さを教えていくことが大切である。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。