パート・アルバイトの採用計画は、人件費コントロールの基本である。社員人件費が固定費的な経費である以上、売上げに対するコントロールはパート・アルバイトの人件費でおこなわねばならないからだ。したがって、パート・アルバイトの採用はつねに、過不足のない適正人員配置と適性人件費率の順守という、二つの要求のせめぎ合いの中で決められることになる。
それがつまり、人件費予算を立てるということなのだが、ここではまず、社員以外に毎月何人のパート・アルバイトが必要かを算出する手法を取りLげよう。
最初に、お店は人件費をいくらまで支払えるのかについて考えてみよう。
売上高-材料費=粗利益高
利益=利益高-(人件費+その他経費)
つまり、人件費は粗利益高から支払われるわけであり、粗利益高に対する人件費のバランスが、利益を確保するための重要なポイントであることがわかる。
さて、人件費管理の指標のひとつである労働分配率は、粗利益高のうちの何%を人件費に当てているかを示したもので、一般には40%が限度である。
労働分配率=人件費/粗利益高
ある月の売上高が1,000万円、粗利益率65%、労働分配率40%とすると、支払い可能な人件費は次のように計算できる。
1,000万円×0.65=650万円
0.4=(x/650万円)
x=260万円
この場合、社員とパート・アルバイトの合計人件費は260万円まで支払うことができるということで、この範囲内で一人ひとりの給与に振り分ければ、適正な利益が得られる。ちなみに、標準的な適性人件費率は25% (この場合は26%)である。
そこで、人件費率を厳密に管理するのであれば、必要なパート・アルバイトの人数は、次の式で求めることができる。
月間計算売上高×計画人件費率=計画人件費
パート・アルバイト必要人数=(計画人件費-社員給与)/パートアルバイト1人当たりの給与
たとえば、月商1,000万円、計画人件費率26%、パート・アルバイト一人当たりの給与(平均)8万円(平均時給800円)、社員の給与が150万円(一人平均30万円、手取り額20万円前後)とすると、必要人員(x人)は、次のようになる。
8,000円/800円=100時間
10,000千円/5,000円=2,000時間
x=20,000時間-1,000時間/100時間=10人
ほかの条件は同じで人時売上高を4,000円として計算すると、15人である。仮に、10人採用してその平均給与が八万円、社員給与が150万円とすると、給与合計は230万円となる。これと、先の人件費率のみを尺度とする場合とを比べてみれば、労働生産性がいかに重要であるかがわかる。
しかし、実はパート・アルバイトの採用人員はこれだけでは決められない。従業員一人が何人のお客を接客できるのか、という視点が欠落しているからだ。つまり、人時接客数を同時に設定していく必要がある。
人時接客数=月間客数/総労働時間数
人時接客数×客単価=人時売上高
(1)月間計画労働時間=月間計画売上高/(人時接客数×客単価)
(2)計画客数=月間計画売上高/客単価
月間計画労働時間=計画客数/人時接客数
人時売上高を基準にした例と同じ条件で、客単価を1,000円として計算すると、人時売上高が5,000円の場合の人時接客数は5人、4,000円の場合は4人である。しかし、A店の従業員は一人一時間当たり6人(人時接客数)の接客ができるとする。すると、
10,000千円/(6人×1,000円)=1,667時間…(1)
10,000千円/1,000円=10,000人
10,000人/6人=1,667時間(2)
そこで、社員月間労働時間は1,000時間だから、
x=(1,667時間-1,000時間)/100時間=7人
となる。逆に、1人1時間当たり二人しか接客できないとすると、23人のパートアルバイトが必要になることになる。
このように、基準にする指標によって、パート・アルバイトの必要人員は変わってくる。しかし、問題はどの指標をとればよいのかということではない。
たとえば、 一人一時間当たりの粗利益高=人事生産性は、適正な利益を確保するための人件費の支払い能力を示す。この能力を高めるためには、粗利益率を高くするのが手っ取り早い。しかし、それは値上げか商品の品質を落とすことだから、必ずお客の反発を受けて客数減を来すことになる。正しい方法は人事売上高を高くすることだが、それには従業員一人一時間当たりの接客数を多くする必要がある。
逆にいえば、いかにして総労働時間数を短くするかが間われているのだ。つまり、教育・訓練によって従業員の人事接客数が高くなれば、パート・アルバイトの人員や総労働時間を増やさなくても、利益は上がるし給与を上げていくこともできるのである。
パート・アルバイトの採用計画は、数式をいじるだけでは絶対にうまくいかない。従業員一人ひとりの作業レベルをつねに把握し、同時に、そのレベルアップと新人の教育・訓練のシステムをつくりあげておくことが大事なのだ。
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