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店長の顧客管理術 [リピーターをいかにつかむか]

店長の顧客管理術 [リピーターをいかにつかむか]

再来客をいかにつかむかは店長の責任

どれだけの客数を確保するか――飲食店の繁盛の条件をつきつめていくと、この1点に絞られている。だから、できる店長はみな、どうすれば客数が増えるか、毎日知恵を絞っているものだ。

ところで、お客は初回客と再来店客に分けられる。このうち初回客の誘致は、お店づくりのコンセプトや宣伝など、経営者の経営施策に左右される部分が大きいため、店長の責任とばかりはいえない。

しかし、一度来店したお客に二度、三度と来店してもらい、自店のファン=固定客になってもらうことについては、原則的に店長の責任である。初回客の再来店を促し、固定客にすることを、顧客管理という。

そこで理解してほしいのは、顧客管理とは技術だということである。技術である以上、方法論を知り、努力をすれば、誰にもできるということだ。逆にいえば、顧客管理がきちんとできないようでは、店長は失格ということになる。

ただ待っているだけでは繁盛は絶対ない

顧客管理にはいくつかの方法があるが、最初に顧客名簿の活用について考えてみよう。

飲食業に限らず、あらゆる商売にとって重要な戦略は、需要の掘り起こしである。需要には顕在需要と潜在需要とがあるが、ふつうはどうしても顕在需要にばかり日を奪われがちだ。ランチタイムだから満席を期待できるとか、ディナータイムだから何人のお客を見いる人=お客と見なす傾向が強い。

たしかに、ランチタイムとディナータイムは、レストランの利用動機の発生要因である。当たり前のことである。しかし、同様に当然のことに、外食動機をもつ人たちが全員、自店のお客になってくれるわけではない。そんなことはいわれなくてもわかっている、と思うだろう。しかし、何も手を打っていなければ、わかっていることにはならない。要するに、来てくれるかどうかわからないお客を、ただ待っているだけに過ぎないのである。

これは、初回客ばかりではなく、固定客についてもいえることだ。固定客といっても、毎日通ってくれるわけではないのだ。ここに、顕在需要のみに頼ることの怖さがある。

アテにならない来店を期待しているだけで繁盛できるほど、いまの飲食業界は甘くない。そのいい例が、いわゆる繁華街商法の凋落である。かつて繁華街では、開店していれば黙っていてもお客が入った。それが、いわゆる一等地信仰をつくってきたのだが、いまは不振店が続出している。 いくら店前通行量があっても、自店のお客になってくれなければ何の意味もないということを、この事実は教えている。

また、いまのお客は、自分の「お店リスト」をいくつも持っている.利用動機別にそれぞれ五〜六店のリストはあるはずだ。ということは、 一人のお客当たり、5〜6店の同業態店=競合店があるということになる。

場合によっては、同業種同業態ということをもあるはずだ。したがって、固定客と思い込んでいるのはお店の側だけで、お客にとっては「たまに行ってもいい」くらいの一店なのかもしれないのである。

DMを上手に活用する

DM (ダイレクトメール)の目的は、そういうお客に対して、自店への来店という明確な目的意識をもたせることにある。お客の意識の中で眠っている来店動機=潜在需要を揺すぶって、顕在化させるのである。

そのためには、ふだんから顧客名簿を整理しておくことが、最低の条件になるの固定客と初回客のいちばんの違いは、自店の商品やサービスを知っているかどうかという点にあるが、この違いは想像以上に大きい。ひと口に需要掘り起こしといっても、その対象は幅広い。いうまでもなく、初回客の誘致も重要なテーマである。しかし、一度でも来店したことのあるお客の来店動機を促すのと、まだ来店したことがないお客予備軍を相手にするのと、どちらが確度の高い需要掘り起こしかは明らかである。

顧客名簿こそ、繁盛を揺るぎないものにするための貴重な財産なのだ。そしてDMは、その財産=顧客名簿のもっとも効果的な運用方法である。

ただ、最近はDMや投げ込みチラシの類いを実施するお店が非常に多くなっている。また、飲食店以外からのDMも増えているから、DM自体を目立たせる工夫をしないと、せっかく出しても読んでもらえない。

という事態が起こる可能性がある。したがって、数打てば当たる式ではなく、的を絞り込んだ効率のいい出し方を考えなければ、DMの経費ばかりかかってしまうことになる。

また、DMは出したら必ずその反応=来店を確認しなければいけない。顧客名簿と同じナンバーをふっておき、来店の際は持参してもらえるようにサービス券の扱いにするといい。この整理が必要なのは、顧客名簿とはどんどん変わっていくものだからである。少なくとも一年間区切りで効果を確かめ、反応のない名簿は切り捨てなければいけない。

「顧客創造」の精神

つまり、固定客は必ず日減りするということだ。たとえば、転勤などで来たくても来店できなくなるお客もいれば、ほかのお店に浮気してしまうお客もいる。

とくに、後者のケースは今後、どんどん増えていくと考えるべきである。はじめて入ったときは、素晴らしいお店に思えても、三度、三度と来店するうちに、最初に感じた素晴らしさは「当たり前」になってしまうからだ。

お客は多かれ少なかれお店に期待感をもっている。新鮮な感動を求めている。しかし、新鮮さは長続きしない。新鮮さ以外の魅力を感じてくれてはじめて、お客は固定客になっていくのだが、やはり人間である以上、飽きるということがある。

したがって、つねに意識的に固定客をつくっていく必要がある。これを顧客創造という。固定客の来店頻度が落ちてゆくことが明らかな以上、その穴を埋め、さらに売上げアップが実現できるだけの新たな固定客

づくりが不可欠なのだ。いわゆる不振店とは、その努力をせずに、漫然と固定客化を待っているだけのお店のことだ。

再来店のために店長ができること

固定客づくりのポイントは、初回客への対応の仕方である。いうまでもないことだが、すっかり馴染みになった固定客も、元をただせば初同客なのだ。

ところが、初回客に対して、固定客化に向けての適切な対応のできているお店は、驚くほど少ない。固定客に対しては何かと愛想がいいのに、初回客には手のひらを返したような無味乾燥な対応をするお店が多い。

どうせフリ客だからとあなどっているとしか思えないのだが、これでは固定客が増加するわけがない。

初回客のハートをつかかサービスは、店長が主役にならなければいけないc席への案内やメニュー表を渡すまでは従業員でかまわないが、オーダーは店長がとるべきなのだ。その際に、当店の簡単な紹介ができるし、メニューを見て迷っているようなら、おすすめ料理を中心に料理の説明をすることもできる。

それぐらいなら従業員でもできるじゃないかと思うかもしれないが、わざわぎ店長が出てくる、というところが大事なポイントなのである。

どうしても店長がオーダーを受けられない場合は、伝票にそれとわからないようなマークをつけておくといい。店長は身体があいたら、そのマークを見て挨拶に出るのだ。もちろん、従業員にもそのマークが何を意味しているのかを周知徹底させておく。そうすることで自然と、食事中の気配りもきくようになる。一人客の場合は、食事中に店長が何かひとことかけるようにする。

食べ終えたら、間を置かずに店長がテーブルに行き、「料理はいかがでしたか?」と声をかける。このひとことでお客の満足感はより大きなものとなり、お店に対する好感も大きくなる。ただし、ほかのお客もいるのだから、お客との会話はあまり長くなってはいけない。

そして、お客が帰るときは出口まで出向いて見送る。

その際、「またのお越しをお待ちしております」と、「当店の大事なお客さま」という意志表示をすることを忘れてはいけない。ドリンク券や割引券などがあれば、このとき手渡すといい。また、レジ担当の従業員も、伝票のマークを確認して、よりていねいな対応をすることができる。

お客とのコミュニケーションをどうとるかが再来店のカギ

また、一般には初回客は4人で来店することは少ない。たいていは2人以上か、固定客に同伴されて来店する。この固定客との同伴というケースも、意外と見過ごされやすい。店長や顔馴染みの従業員がテーブルに出向くのはいいのだが、固定客とばかり話をして、初回客をおいてきぼりにしてしまいがちなのだ。

もちろん、固定客に対しては当店をひいきにしてくれていることへの感謝の気持ちをあらわさなければならないし、「自分はこの店で大事にされているんだ」という同伴客に対しての自尊心も満足させる必要がある。しかし、それはある程度で十分なのであって、店長が話をすべきなのは、同伴されてきた初回客なのである。

そして、店長は話のきっかけづくりに徹して、初回客に話をさせるようにすることが大切なポイントだ。こうすることによって初回客の、お店に対する親近感が強くなる。居心地がよければ、次回の再来店につながっていく。

要するに、お客とのコミュニケーションをいかにうまくとるかが、固定客づくりのポイントである。お客はお店に対して、飲食というモノだけを要求しているのではない。ホッとできる温かみとか、心の触れ合いを期待しているのだ。だから私はいつも、飲食店の最大の売り物は「お客への愛」だといい続けている。お店が繁盛するということは、多くのお客にお店の愛が受けとめられている証拠なのである。

顧客管理という言葉にはどこかしら冷たい響きがあるが、実はそうではない。また、先に管理は技術だといったが、それは「心」のともなった技術という意味だ。サービス業はすべてにおいて、お客への奉仕=愛がベースになっていなければならないのである。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。