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つねに飲食業プロとしての問題意識をもつ

つねに飲食業プロとしての問題意識をもつ

店長は飲食業のプロである

店長にとって、現状肯定は最大の落とし穴である。経営は生き物というが、まさにそのとおりで、成長が止まったとき=現状を肯定したときから、お店は衰退への道を歩き始める。

たとえば、QSCのスタンダードの維持は店長の義務だが、正確にいえばこの「維持」とは、固定された状態のことをいうのではない。スタンダードはたゆまぬ改善の上に成り立つものである。

なぜなら、飲食店のマネジメントに完璧ということはないからだ。ある時点では一応満足のいく状態だったとしても、次の時点ではもはや、それはあるべき状態ではなくなっている。次の改善のテーマが浮かび上がってくる。その改善の積み重ねでしかお店は成長することはできないのだ。

店長は飲食業のプロであるっプロとは、お店を成長、発展させることができる人、という意味だ。いま自店には何が足りないのか。店長はつねに、その問題意識をもち続けていなければならない。

「これでいいのか?」という問題意識をつねにもつ

問題意識とは、現状を変革しようという意識である。それにはまず、現状に疑間をもつことだ。「これでいいのか?」という意識でお店の中を見回してみる。そうすれば、次々と問題点が浮き出てくるはずだ。

たとえば、マニュアルは誰もが均質な仕事ができ、また仕事を覚えやすくするために絶対必要なのだが、いくらよくできたマニュアルがあっても、実際にマニュアルどおりに仕事が遂行されているかどうかは別だ。

従業員全員が完璧にこなせているなどというのは、現実にはあり得ないわけで、仕事の習得が遅い部下に対しては、訓練の方法や訓練に当てる時間を考え直さなければならない。

場合によっては、挨拶の仕方などマニュアル自体を改善すべきかもしれない。

店舗チェック表の活用

ここで、マニュアルの遂行度のチェックについて、具体策を紹介しておこう。以下のような店舗チェック表の活用である。

飲食店が不振に陥る要因はいろいろあるが、そのもっとも大きな要因のひとつは、マニュアルの有名無実化だからだ。

いま述べたように、どんなマニュアルもそのとおりに仕事が遂行されていなければ、そのマニュアルは存在しないも同然なのである。これはちょっと極端ないい方かもしれないが、マニュアルと違うやり方や手抜きを許すことは、最初はささいなことでも必ず、マニュアルの有名無実化を引き起こすことになるのだ。「これくらいはいいか」という意識が怖いのである。

さて、店舗チェック表だが、別項(第2章1項)で挙げた「店長の営業中のチェック項目」をまとめたものと考えていい。

チェックすべき内容別に、
①店舗の店頭および外観
②従業員就業状況
③商品管理
④店舗管理

の四つのグループに分け、それぞれのグループごとに各項目の評価を採点できるようになっている。四グループとも100点満点なので合計400点満点になる。そこで、わかりやすくするため100点満点に換算し、現状があるべき姿= 100点に対してどうなのかを点検し、問題点を探し出すのである。

ただ、注意しなければならないのは、評価の基準を明確にしておくということだ。この基準がバラついていては、チェックの意味がない。マンネリ化からいつの間にか、無意識的に現状肯定になってしまうことにもなりかねない。

また、実際に仕事をするのは従業員なのだということも忘れてはいけない。彼らの仕事に対する理解と納得がなければ、問題の発見はできても改善にはつながらない。評価の基準づくりには、従業員も参加させるべきである。

問題点を見つけたら即、改善の行動を

マニュアルの遂行度以外にも、改善すべき問題点はいくらでもある。

たとえば、食器の破損をもっと少なくできないかとか、サンプルのディスプレイはいまのままでいいのかとか、アイドルタイムをより有効に使うことはできないか、等など。

少し考えれば、キリがないほど出てくるはずだ。店長自身のワークスケジュールづくりに問題があることもあるかもしれない。

こういう問題点はたいていの場今、改善すること自体がむずかしいわけではない。改善しようとする意識がないから、放置されているにすぎない。一度胸に手

を当てて、自分がどれほどの問題意識をもっているか、素直に反省してみてほしい。ところで、問題点は何も、店長自身の状況観察からしか発見できないのではない。お客のクレームが教えてくれることもあれば、部下の提言によって明らかになることもある。

また、他店を見学することによって、自店の欠点も見えてくる。これらについては後の項目で詳述するが、大事なことは、問題点を発見したら即、改善行動に移すことである。そして、何をどう改善するかということだけでなく、誰が(あるいは誰と誰が)、いつ取り組むのかということと、改善の理由、そして改善目標を明確に部下に示すことがポイントになる。

とくに「理由」を挙げたのは、一方的な押しつけでは部下の協力が得られないからである。改善とはいいかえれば、現状否定だが、人間には一般に、そういうことに対する抵抗感をもつ傾向がある。なぜ改善すべきなのか、そして改善することによってどういう効果があるのかを、店長は具体的に、部下に示すことができなければいけない。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。