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飲食店・工事中と引き渡し時の注意点、必ず見るべきポイントリスト

まず、工事に入る前に、近所に挨拶しておく。これは非常に大事なことである。たしかに、小さなお店の場合、工事自体は大したものではない。期間も1カ月から1カ月半程度と短いし、毎日騒音をまき散らすわけでもない。それほど迷惑はかけないと思うかもしれないが、それは違う。近所にとつては迷惑なのだ。

また、この挨拶はたんに「ご迷惑をおかけします」ということではない。これから末長くお付き合いさせていただく、という挨拶でもある。小さなお店は地域密着が基本。近所に嫌われては成功できない。

さて、工事が始まったら、できるだけ現場に足を運ぶことだ。この期間は他のオープン準備も山積ふだから業者任せにしてしまうケースが少なくない。しかし、できるだけ時間をやり繰りして、実行してもらいたい。

現場に顔を出す目的は、設計と工程表通りに工事が進んでいるかどうかをチェックすることだが、もうひとつ、大切な目的がある。それは、工事の人たちとの良好な人間関係を築くことである。

どんな仕事でも、やる人の気持ち次第で結果はずいぶんと変わる。店舗の工事も同じである。大筋では大差ないかもしれないが、細かい部分で必ず仕上がりに違いが出るものである。とくに内装は、そういうちょっとした仕上げ具合のよし悪しが、印象を大きく左右する。だから、現場に顔を出すときは、何か差し入れをすることを忘れてはいけない。缶コーヒーでもいい。要は、こちらの気持ちを示すことが大切なのだ。

また、工事中ならまだ、いろいろと手直しがきく。とくに厨房は設計図の段階ではわかりにくいが、工事が進んでくると、実際の仕事が具体的に想定できるようになる。そこで不具合が見つかったら、多少の追加料金を払ってでも直しておくべきなのだ。

とくに、大型機器類の配置や配管関係の工事は、完成してから変更するのは、実際問題としてほとんど不可能になってしまう。収納棚の高さ、位置なども自分の体で判断するのが間違いがない。工事の人たちと親しくなっていれば、そういう変更も言いやすいし、ちょっとした棚をつくる程度のことなら、無料でやってくれることもる。                            ・

引き渡しでの注意点はまず、契約した引き渡し日は必ずしも工事完成日ではない、ということである。引き渡し日とは、見積書と設計図通りに仕上がっているかを確認する日なのだ。

店舗の端から端まで細かくチェックすることは言うまでもないが、動くものはすべて動かしてみることが大切だ。機器類などはもちろん、ドア、窓、棚、引き出しなど、何度も開け閉めして建て付け具合を確認する。空調設備はできれば半曰くらいは運転して、きき具合を確認すべきである。

問題があればただちにダメエ事にかかつてもらうが、そのためにも工事契約書には、「完成日」とともに、工事が遅れたり補修工事が必要になった場合の対処の仕方も明記しておかなければならない。こういう契約事での口約束は絶対に避けるべきである。

飲食店が看板を重視しなければならない理由

飲食店にとって、看板は非常に重要な意味をもっている。その意味とは、言うまでもない。自店の存在を知らせるということだ。

ところが、はじめてオープンする人たちばかりでなく、すでに営業している飲食店の多くが、このことに気づいていないのである。だから、たいていのお店はほんの付け足し程度、申し訳程度の看板を出しているだけで、平気な顔をしている。それでも繁盛できている場合はいいが、お客様が少なくて困っているというのに、看板を見直そうという発想が出てこないらしい。

どうしてそれほど看板が重要なのか。看板がなければ、そこにお店があること自体がわからないからだ。いや、 一応は看板を出しているといっても、その看板が通行人の目に止まらなければ、通行人にとって、そこにお店はないも同然なのである。

多くの飲食店が看板を軽視しがちなのは、「自店はけっこう知られているはず」という思い込みがあるためだ。ちょっとよく見れば、気づかないはずがないというわけだ。こうなると、うぬぼれといつたほうがいいかもしれない。

一般に、通行人というのは、それほど細かいところを見ているわけではないものだ。自然と目に飛び込んできたもの以外は、ほとんど見ていないといっていいだろう。何かの看板らしきものがあったとしても、とくに目につくものでない限り、格別興味は示さない。だから、さつさと通りすぎてしまう。そんなものである。看板というのは、出していれば見てくれるというものではない。いやでも日につくようにしておく。そうでなければ、看板の意味がないのだ。

とくに小さなお店は、かりに1階の路面店であってもお店の間回が狭いから、外観もお客様の目に入りにくい。それなのに、看板も目立たないとなれば、見過ごされてしまう可能性が非常に高い。しかも、実際には小さなお店は、投資額の制約から、2階や地階への出店が多いから、ますます不利になってしまうわけである。

繁盛するためには、とにかく目立つことだ。 一人でも多くの人に自店の存在を知ってもらわなければならないからだ。飲食店のよさは、実際に入ってみなければわからない。ということは、とにかく一度、お店に入ってもらわなければ話にならない。看板は、そのきっかけづくりのためにあるわけだ。

看板で最も大切なことは遠視性、つまり遠くからでもはつきりとお店の存在がわかる、ということである。お店の前で看板に気づいたとしても、たいていはそのまま通りすぎてしまう。遠くから見えていて時間的な余裕があるからこそ、「あのお店に入ってみようか」という興味をもってくれる。

したがって、看板は取り付ける(置く)位置が重要になる。お店の周りを歩いてみて、どこが最も目立つ場所かを確認することだ。もちろん、ビルによっては位置や大きさなどに制約があるが、その中で最善の場所に出す努力を惜しんではいけない。また、看板は意外とお金のかかるものだが、日立つための投資はケチるべきではない。

繰り返すが、通行人というのは、地元の人でも、自分に関係があるか興味がある建物、店舗しかよく見ていないものだ。店前通行量がどれだけあっても、気づいてもらえなければ意味がないのである。

席数確保を念頭に置いた飲食店舗レイアウトのポイント

店舗は厨房と客席ホールとに分かれる。理想を言えば、厨房もホールも、どちらも広く取りたいものだ。厨房は働きやすく、使い勝手のよいものにしたいし、客席は居心地がよくて、しかも席数はできるだけ確保したい。店舗レイアウトの最大のテーマは、限られたスペースの中で、こういう矛盾をいかにうまく解決するかということだ。

もちろん、小さなお店の場合、客席数の確保の問題があるから、厨房スペースは当然、ぎりぎりの広さになる。その限られたスペースで、なおかつ働きやすい厨房にしなければならないわけだ。

一般に素人の場合、業者のすすめるレイアウトのままでOKしてしまうことが多いが、後になって、ああすればよかったと後悔することになりがちだ。厨房レイアウトで最も大事なことは、広さに余裕があるとか、機器類が整然と並んでいることではない。本人が作業しやすい厨房でなければ意味がないのである。

たとえば、調理はさまざまな工程から構成されるが、その一連の動きがよどみなく流れなければ、ピーク時にパニックになってしまう。しかも、通常は一人ではなく、何人かのスタッフが同時に働く。それぞれのスタッフの仕事がうまく連携できて、お互いに邪魔にならないような動線を工夫しなければならない。まな板やガス台の高さなど、長時間働いてもできるだけ疲れない位置取りも大切だ。また、盛りつけ台とデシャップ(料理出し下げをする場所)、食器を下げたときの置き場所と洗い場の位置は、できるだけ最短距離にすること。ここが意外と盲点になる。

厨房レイアウトは、いったん工事が終了して設備機器類を設置してしまったら、現実にはほとんど変更がきかない。配管などの工事は、大変なお金がかかるのだ。 一方、客席ホールのレイアウトでは、必要な席数を確保することが最大のテーマになる。必要なというのは、売上計画を実現するために「必要な」席数という意味だ。

しかし、席数はたんに数だけ取れればいいというものではない。1席でも多く取って売上を伸ばしたいという気持ちはわかるが、客席は稼働しなければ意味がないということを知ってほしい。たとえば、4人掛けテーブルに2人客だと、2席が「死に席」になってしまう。実際、 一組当たりの客数は、せいぜい2〜3人である。それなら、最初から2人掛けテーブルを基本にしておくべきなのだ。いまのお客様は相席を非常に嫌がるから、席の取り方には注意したほうがいい。

小さなお店では、オープンキツチンのカウンター席にすると席数を取りやすいが、この場合は、カウンターの下にバツグなどを置ける棚をつくっておくことだ。棚がないとお客様は隣の席まで占領してしまう。また、イスの間が狭くて一人分のスペースが小さいカウンターは、 一見席数を確保できたようだが、お客様に敬遠されやすい。

客席ホールは、いくらデザイン的にすぐれていても意味がない。まず、お客様の居心地感がいいこと。そして、サービスのための動線が単純(直線的)で、距離はできるだけ短くなければいけない。

なお、テーブルの広さは、使用する皿の大きさとオーダーしてほしい皿数を考慮して決めること。狭いと並べきれないから、オーダーもしてもらえない。

飲食店の設計・施工業者の選び方

お店というのは、設計・施工業者によつてずいぶん変わる。業者選びはくれぐれも慎重に進めてほしい。設計も施工も、業者を選ぶ最大のポイントは飲食店専門の業者ということだ。ひと口に設計・施工業者といっても、得意分野はさまざまである。飲食店専門と宣伝している業者でも、業種や業態によって得手不得手があるものだ。ましてや、飲食店の経験のない業者では、 一応はカッコのいい内装デザインはできても、お店の機能性や使い勝手に問題が出てくることが多い。

たとえば、カウンターの幅や高さひとつで、お客様の居心地感はずいぶん違ってくるし、お客様の居心地のよさを大事にしながら席数を確保するのは、それほど簡単なことではない。専門で、なおかつ実績のある業者との差は、デザインではなく、そのあたりのノウハウにはっきりと出てくる。厨房機器類のメーカーや販売店とのパイプがあるかどうかも、大事なポイントだ。

また、工事をスムーズに進行させるには、内装、厨房、空調の各工事を一括して任せられるところがベスト。そして、職人、監督を自社で抱えている業者を選ぶといい。下請けばかり使っている業者では、責任の所在が曖昧になりがちだ。完成後の手直しなどアフターサービスからいえば、地元の業者がいいだろう。

業者の実績は、その業者がこれまでに扱ったお店を教えてもらい、自分の日で確かめること。できればお客様として食べてみて、居心地感や細かい仕上げなどもチェツクする。きちんと話を通せば、厨房も見学させてもらえるはずである。

そして、これは非常に大切なことだが、できれば最低3社から相見積もりを取って、内容を比較検討してみることをおすすめする。そうすれば、素人でもかなり客観的な判断が下せるはずだ。

見積書の見方では、「○〇一式」という項目が多く、個々の数量や種類などが省略されているかどうかが、最大のチェックポイントだ。単純に安い、高いに気を取られてはいけない。見積書の総額は安くても、他の業者に記載されている項目が抜けていることがある。そういう業者は、後になってから「追加」を請求してくるから注意が必要だ。機器類、什器備品類はすべて、カタログか実物で確認させてもらう。

業者との打ち合わせでは、店舗はあくまでビジネスの場だということを忘れないように。ビジネス発想がないと、ついお金をかけすぎたり、業種業態にそぐわないお店にしたりしてしまいがちだ。

こちらの希望を無視して、流行のデザインや自社のデザインパターンを押し付けてくる業者はやめておいたほうが無難。お客様は店舗デザインだけで呼べるものではないし、打ち合わせを面倒がるようでは、とても安心して任せることはできない。

業者選びは簡単ではない。しかし、肝心のお店をつくるのは業者だし、投資額も最も高い。安易に決めてしまっていいわけがない。

飲食店の開店スケジュールの基本的な立て方

やってみるとよくわかるが、飲食店のオープンというのは、意外と大変なものだ。オープンまでにやらなければならない仕事は山ほどある。細々としたことも多いし、期間は限られている。忙しさに紛れてつい忘れていたと、オープン直前になって慌てるというケースは珍しくない。

慌てないためには、開店までのスケジュールをきちんと立てることである。慌てるだけですめばいいが、オープンで失敗すると、なかなか取り返しがつかない。

もうひとつ、忘れてはいけないのは、店舗の賃貸借契約を交わした時点で、家賃が発生しているということだ。もしもオープンが2週間遅れれば、半月分の家賃がムダ払いになる。悠長に構えてはいられないはずだが、また、焦ったからといつてうまくいくものでもない。

開店スケジュールの最大のポイントは、店舗の内装工事と機器類、什器備品類の納入である。

効率よく進めるためには、店舗の賃貸借契約を結んだら、すぐにも工事に入れるようにすることがポイントだ。設計・施工業者への工事の依頼は、店舗の契約前、手付金を打った時点ですませて、見積もりを取っておく。この見積もりは、金融機関から融資を受けるときにも必要になる。不動産業者はその辺の事情はわかっているから、本契約を待ってくれるはずだ。

設計施工業者とは完成までのスケジューリングを打ち合わせるから、ここでオープン予定日が決まる。

ただし、業者に依頼したからといつて、自分のやる仕事がなくなるわけではない。ここを甘く考えているから、後で慌てることになる。工事が始まったら、時間のかかる仕事から優先してこなしていくようにする。

何をしなければならないのかについては、最下部の流れ図を参照してほしい。

モレを出さないためには、計画的に、 一つ一つつぶしていくように進めることだ。そこで、開店スケジュール表をつくることをおすすめする。タテにやるべき仕事の項目、ヨコに日付を取った表にして、項目ごとに、取り掛かる日と最終期限を書き込んでおくのだ。こうしておけば、今日は何をすべきか、何はいつまでにできていなければならないのかが一目瞭然。うっかりやり残すという心配がない。進行具合を小まめにチェックして、遅れている項目は早めに修正する。

小さなお店の内装工事期間は、大体1カ月から1カ月半程度。着実にこなしていかないと、あつという間に過ぎてしまう。

居抜き物件での飲食開店の注意点

居抜き物件というのは、飲食店として営業していた店舗が、そのままの状態で賃貸し、または売りに出されている物件のことだ。内装はもとより、厨房設備、空調設備などの設備機器類やイス、テーブルなどの什器備品まで、お店の営業に必要なものがひと通り揃っているわけだ。

ただし、賃貸しの場合でも、賃貸になるのは店舗だけで、設備や備品類は買い取りになる。そのため、居抜きで借りる場合は、保証金(敷金)の他に造作譲渡代(店舗内外装代)を払うことになる。

したがって、店舗の契約時に支払う金額で見ると高く思われるかもしれないが、設備や備品類を買わなくてすむのだから、結果的には安く上げることができるわけだ。資金の少ない人にとっては手頃な物件だし、けっこう掘り出し物があることも多い。

もちろん、そのまま営業できる店舗なのだから、自分の思いどおりのお店づくりができないという制約はある。その場所がどうしてもほしいために居抜きで借りて、新たに内装をやり直すというケースもないではない。しかし通常の場合、内装や機器類、備品類を活用しないのでは、何のために譲渡代金を払ったのかがわからなくなる。

お店は自紙の状態からつくればいいというものではない。自分の考えるビジネスの場として成り立つのかどうかの判断が大切なのである。内装の雰囲気などは、ちょつと工夫すればいくらでも変えることができるし、オープン後、資金の余裕ができてから手直しするという考え方もある。

つまり、居抜き物件でオープンする場合は、できるだけその店舗のまま生かすことが大前提になるわけだが、そこで注意しなければならないのは、内装設備が本当にそのまま使えるのかどうかということだ。

物件によって一概には言えないが、厨房設備にしろ備品類にしろ、見た日以上に傷んでいることがままある。なにしろ、少し前までは毎日使用してきたものなのだ。借り手が見つからず長期間放置されていたため、設備が故障しているというケースも考えられる。

イスやテーブルなどの状態はもちろん、トイレなどの水回りやドアや窓の建て付けなど、ガタがきているということもある。その辺のチェックは入念に行う必要がある。できれば、リサイクルショップなどの専門家に頼んで、きちんと点検してもらうといい。

また、厨房設備や空調設備などの場合、リース契約になっていることがある。その場合、支払いはどうなっているのか、保証期間はいつまでなのかということも、不動産業者を通して確認しておくことだ。

これらのチェックをした上で、その譲渡代金が適正かどうかの判断をするわけだが、居抜き物件を活用するのなら、新品を使いたいという欲求はとりあえず抑えておくことが大切。なんとなく買い替えたりしていたら、居抜きのメリットがなくなってしまう。それなら、最初からカラ店舗(内装工事が施されていない通常の店舗)を借りるべきなのだ。

ただ、お店の経営方針上どうしても導入しなければならない厨房機器類などが出る場合があるが、スペースの問題やビルの構造上の問題などで設置できないということもあり得る。この辺も事前に確認しておくことだ。

飲食店開店の候補物件の見分け方

候補物件の適否を判断するには、物件周辺の立地調査と、物件自体の調査の2つの視点が必要だ。すでに商圏内の立地調査によって、エリア内の様子はある程度つかんでいるはずだが、ここでは物件周辺に絞り込んで、人の動きと競合店の状況を調査する。

まず、人の動きの調査は、物件の店前通行量調査である。道端で両手にカウンターをもち、通行人の数を調べている光景を見たことがあると思うが、ファーストフードなど店前通行量が直接集客力に結び付く業態以外は、カウンターを使用するには及ばない。

この調査のポイントは、人数は概算でいいから、男女別、年齢別、職業別の大まかな傾向をつかむことだ。自店のお客様になりそうな人が通っていなければ、いくら通行量があっても意味がない。

また、飲食店はその業種業態によって、お客様の利用する時間帯に大きな波がある。したがって、調査の時間帯は1時間ごとに区切り、予定している営業時間の前後1時間まで調査する。曜日別の傾向をつかむには、最低でも平日、土曜、日曜の3回は物件の前に張りついて調査する必要がある。

郊外型のお店の場合は、曜日別、時間帯別のクルマの通行量を調査するが、クルマの数だけでなく、車種(乗用車、トラック)、1台当たりの乗車人数、ナンバー(地元、他府県)などをチェックする。この場合は、できればカウンターを使用して正確な数を出したほうがいい。見るだけだと、渋滞している道路は通行量が多いと錯覚しがちだ。

なお、ロードサイド立地では、中央分離帯の有無や、反対車線から右折しやすいかということが大きなポイントになる。一般に、大きな道路だと、片側車線しかお客様を見込めないことが多い。

周辺の飲食店については、競合店と思われるお店はすべて、お客様として利用してみることだ。メニューと価格を見ることはもちろんだが、お客様を注意深く観察することで、客層の動向や消費レベルもつかめる。

次に、店舗物件調査に入る。ポイントは、オープンする業種業態に適しているか、賃借条件が適正か、である。

ところで、店舗物件は1階だけでなく、2階(以上)や地階もある。1階に比べて家賃・保証金が安いから、小さなお店が入りやすい物件だ。ただし、この場合は階段の形態やエレベーターの有無と位置も重要なポイントになる。

つまり、立地条件とは平面だけでなく、テナントビルに出店する場合は、タテの条件も重要になるということだ、ここで、1階、2階、地階の特徴をまとめておこう。

まず、1階はお客様がお店に入るのに最も抵抗感がないから、立体で見た場合の一等地になる。しかも、ほとんどすべての業種業態にとっての好立地であるため、家賃・保証金が高くなるわけだ。

エレベーターのない場合の2階は、階段を上がるのに抵抗があるお客様が多いため二等地の位置づけになる。階段を降りる地階の場合は、2階よりもお客様は楽だが外から目立ちにくい。そこで、やはり二等地となる。

しかし、業種業態によって、ビル内立地の評価は変わる。1階は一等地といっても、1階であることが絶対条件になるのは、ファーストフードなど日常的利用動機を取り込む業態の場合である。逆に言えば、それ以外の小さなお店は、無理してまで1階に入ることはないわけだ。

2階は比較的カジュアルな業態が向いており、窓の採光があればなおいい。また、窓からの眺めがいいなどの場合は、一等地といってさしつかえないケースもある。

反対に、地階の場合は高級感を重視するなど比較的重い業態に適している。隠れ家的な雰囲気を演出しやすいのも地階の特徴だ。つまり、この場合もお店のコンセプトによつては一等地になる。

さらに、フロアの中での位置も重要だ。たとえば、2階や地階でも、階段やエレベーターの近くは一等地になるし、ビルの奥に引っ込んでいて見えにくい場所は二等地となる。他店や柱などで見えない場所もあるが、そういう場所はできれば避けたい。

以上は店舗の位置を中心にした判断基準だが、店舗は面積だけでなく、その形状もじっくりと検討したほうがいい。形によつては席数を取りにくいケースもままあるし、柱などの出っ張りも予想以上に邪魔になるものだ。小さなお店だからこそ、間回の広さにはこだわるべきだ。

また、物件調査では、ガス・水道。電気の容量は必ず確認すること。別工事をするとかなりの出費になってしまう。ビルによっては、看板やサンプルケースに制限がある場合があるから、これも注意してほしい。

賃借条件が適正かどうかは、これら店舗の状態を確認して判断することになるが、保証金の償却や共益費・管理費などの付帯条件についても、慎重に検討するべきだ。家賃が多少安くても、これらが高かったら意味がないことになってしまう。

単価×人口×所要時間で見る飲食店の立地調査のカンどころ

候補物件が出たら立地調査を行うが、基本は、その物件を中心に、商圏と考えられるエリア内をくまなく歩いてみることである。

一度だけではなく、いろいろな曜日、時間帯、天気と条件を変えて、歩き回ってみるのだ。これで、そのエリアの全体像をざっとつかむことができる。観察するポイントは、町のタイプ(住宅地、商業地など)、出店しているかということだ。

さらに、地元の役所や商工会で、人口動向(人口構成、世帯数、年齢構造、男女比など)や消費水準、職業構成などを調べるといい。事業所や学校もターゲットになる場合は、その規模や数、位置なども調べる。

なお、商圏の範囲(人口、所要時間)は業態によって変わるから、 一般的な目安を挙げておく。

・客単価500円まで / 1万5000人〜2万人:5分以内
・500円〜1000円 / 3万人〜6万人:10分〜20分
・1000円〜2000円 / 6万人〜10万人:20分〜30分
・2000円〜5000円 / 10万人以上:1時間
・5000円以上 / 基本的に無制限

ただし、これはあくまで目安であって、商圏内人口を満たしていなくても繁盛している例はたくさんある。繁盛店はロコミなどで名声が広がるため、来店所要時間の制限を受けにくくなることも付け加えておこう。

また、商圏は自店を中心とする円形になるとは限らない。駅やデパート、大型スーパーなど、消費行動のマグネット施設がある場合は、その施設から自店に向かう方向の商圏は広めに設定できる。逆に、片側2車線以上の繁華な道路や鉄道、川などがある場合は、商圏はそこで切断されるということも知っておく必要がある。

立地調査といつても、大袈裟に考えることはない。要は、どんな人たちが集まっている町なのかを、できるだけ具体的につかむことが大切なのだ。役所などでデータを集めるのもそのためで、地域の消費者のトータルな生活像を把握することで、どんな業種。業態がしっくり受け入れられそうかという予測も立つわけだ。

もちろん、小さなお店でここまで調査する必要はないという意見もあるだろう。また、大した調査をしないでオープンしても、繁盛しているお店があるのも事実だ。しかし、確実に成功したいのなら、できる調査はしておくべきである。

たとえば、住宅地といっても、新興住宅地と旧住宅地とでは住民の層が違うし、消費行動も違う。マンションやアパートが多いかどうかということも、大事なポイントだ。

また、町は生き物ということも頭に入れておいてほしい。いまこうだからといつて、1年後、2年後にも同じ姿だという保証はない。新道ができるとか、大型商業施設が一カ所オープンしただけで、人の流れはガラリと変わってしまう。町の将来像を事前につかんでおくことも忘れてはいけない。

一等地でなくても成功できる飲食店とは?

飲食店にとつて、立地条件は非常に大切な要素である。飲食業は立地産業といわれるほどで、成功するための重要なポイントだ。はじめてオープンする人でもそれくらいのことは知っているようで、できるだけ「いい立地」に出店したいと思っているはずだ。

ただ、ここで問題になるのが、「いい立地」とはどういう立地か、ということだ。何をもって立地条件のよし悪しを判断すべきなのか。このことをきちんと理解しておくことが大切なのである。

飲食店の立地については、 一等地とか二等地といった評価がよく使われる。もちろん、二等地よりも一等地に出店したほうが有利という意味だ。たしかに、 一般論で考えれば一等地が有利なのは事実である。しかし、だからといつて、 一等地なら必ず成功できて二等地では成功できない、ということにはならない。

個別のお店の出店条件という視点から見ると、 一等地がかえって不利になることもあるし、二等地だから成功しやすいということも少なくないのである。

一等地とはどんな立地かというと、たとえば、繁華街や商店街のメインストリートに面しているとか、中心地にある立地である。駅前広場に面しているとか、デパートやスーパーなどの集客力のある施設が近くにあるというのも有利な条件だし、有名店がたくさん集まっているエリアも一等地である。

しかし、当たり前のことだが、そういう立地は家賃・保証金が高い。また、 一等地の根拠のひとつは人通りが多い(店前通行量が多い)ことだが、それはそのまま競争が激しいことを意味する。そこそこお客様が入ったとしても、高い家賃が利益を食ってしまうし、お客様の回転がいいと人件費も増大する。しかも、フリー客中心の立地のため、経営が安定しにくい。 一見非常に有利そうな一等地にも、こういうデメリットが隠されているわけだ。

一方、二等地と呼ばれるのは、裏通りや路地裏、路地奥にあるとか、駅からの所要時間が長いとか、飲食店の数自体が少ないといった条件の立地である。

たしかに、素人が見れば不利な立地としか思えないかもしれない。しかし、家賃・保証金が安いというのは、損益分岐点を低くできるのだから、経営的に見ると大変なメリットである。また、競合店が少なく「わざわざ客」が中心になるため、固定客化しやすいというメリットも見逃せない。 一等地のようなお客様の回転は望めないが、人件費は節約できる。要するに、売上高は小さくても利益が出やすいのが、二等地の隠されたメリットのわけである。

飲食店は立地のよさだけで繁盛できるものではない。ましてや、小さなお店は少ない客数で成り立つビジネスだ。低投資・高利益をめざすのが、最も合理的な戦略である。無理な投資をして苦しい経営を選ぶ必要

お客様は、 一等地にあるかどうかでお店を選ぶわけではない。自分の気に入るお店かどうか。それがお客様の判断基準だ。二等地であっても、ターゲットとする客層と利用動機を吸引できるエリアであれば、何の問題もない。 一般論の一等地神話は忘れることである。

飲食店に取っての商圏とは何か

別項でも触れたように、商圏というのは、自店のお客様(になる可能性のある人)が住んでいたり、勤めていたりする地域の範囲のことである。お客様を呼び込むことができるエリアということだ。

一般に、商圏は距離と人口で表される。たとえば、お店を起点に半径何キロとか、商圏人口は〇〇人、という具合だ。しかし、お店からの時間と人口で考えたほうが、より正確である。なぜなら、お客様が来店する移動手段は、徒歩とは限らないからだ。自転車利用のお客様は、同じ所要時間でも距離はかなり遠くなる。クルマ利用ならなおさらだ。

そして大事なのは、お客様が消費行動を決定する要因は、日標店までの距離ではなく、あくまで所要時間だということである。

さて、別項で、ポピュラープライスの小さなお店は商圏の設定範囲を狭くしたほうがいいといつたが、商圏の広さは業態(価格設定)によって変わる。

価格が高い業態になるほど、商圏は広く設定しなければならない。どうしてかというと、価格の高いお店はお客様の利用頻度が低くなるからだ。反対に、価格が低い業態になるほど利用頻度は高くなるため、商圏は狭くても十分に成立するということになる。

業態のところで説明したように、お客様の飲食店の利用動機は「日常的利用動機」と「非日常的利用動機」とに分けられる。そして、価格が低いほど、お客様の利用動機は日常的になる。だから利用頻度は高くなるわけだ。逆に、サイフの痛む「非日常的利用動機」はそうそう発生することはない。当然、利用頻度は低くなる。

また、商品の特性によっても、商圏の範囲は変わる。たとえば、焼肉店のようなヘビーな商品を売り物にしているお店の場合は利用頻度が低いから、広い商圏を設定しておかなければならない。 一方、ラーメン屋とかそば・うどん屋のような日常的利用動機を狙うお店の場合は、 一人のお客様の来店頻度が高いから、狭い商圏でも成り立つというわけだ。

一般に、高級店は大商圏主義が、ポピュラープライス店は小商圏主義が適していると言われるのは、このためである。とくに、小さなお店の場合は、できるだけ狭いエリア、少ない商圏人口で成り立つことが望ましい。だれもが知っていて日常的な商品を、気軽に利用できる価格で提供すれば、人口は少なくても客層の幅が広がるし、お客様の来店頻度も高くなる。

ただし、頭に入れておかなければならないのは、商圏が狭いほど、競合店の数が増えるということだ。お客様の利用動機がつねに発生していれば当然、その奪い合いが起こる。競合店とは業態が同じお店のことだ。

ということは、その競合店とは同じ利用動機を奪い合う関係になる。したがって、同一業態内では必ず、価格競争が起こることになるのだ。

そうなると、モロに商品力が問われるわけで、たとえポピュラーな商品であっても、オリジナリティーのアピールが非常に大切になる。また、シビアな競合を避けて確実に成功するためには、別業態、または競合店の少ない立地を選択する必要も出てくる。

著者紹介:宇井 義行
コロンブスのたまご 創業者・オーナー

学業のかたわら、18歳から飲食店で働きながら実践的な飲食業を学び、23~25歳で6店舗の飲食店経営を手掛け、超繁盛化。赤字店の1ヶ月での黒字化など奇跡を起こし注目を集める。 26歳の時、実践的な「飲食コンサルタント」として独立。個性的な店、地域一番店を目指し、情熱ある現場直接指導に力を注ぎ、 全国の飲食店3000店舗以上を指導。指導歴日本一のフードコンサルタントとして数多くの難問を解決。不振店を繁盛店へと生まれ変わらせる手腕は業界屈指のリーダーとして国内外で高く評価されている。